施工管理の仕事では、構造物や土工などを設計図書に基づいて施工するだけでなく、**完成した形状や寸法が設計どおりに出来上がっているかを確認する「出来形管理」**を行います。
新人の頃は、
「どこを測ればいいのか」
「設計値と実測値は何を比べるのか」
「規格値に入っていればそれでいいのか」
など、分かりにくい部分も多いと思います。
この記事では、出来形管理とは何をするものなのか、測定から記録・写真管理までの基本的な流れを、実際の施工管理の経験も交えながら新人向けに解説します。
出来形管理とは
出来形とは何か
出来形とは、工事によって施工された部分の形状や寸法など、実際に出来上がった状態のことです。
土木工事では、道路や構造物などを施工した際に、設計図書に示された寸法や形状どおりに出来上がっているかを確認する必要があります。
例えば、構造物の幅や高さ、道路や水路などの延長、盛土や切土の高さ・幅、法面の勾配、構造物を施工した位置などを実際に測定し、設計値と照らし合わせて確認します。
このように、実際に施工したものの寸法や形状などを測定することを「出来形測定(出来形計測)」といい、その結果を設計値や管理基準と照らし合わせ、記録・管理していくことが「出来形管理」です。
出来形管理と品質管理は似ているように感じますが、確認する内容には違いがあります。
出来形管理では、施工したものの寸法・形状・高さ・位置などが設計どおりに出来上がっているかを確認します。
一方、品質管理では、使用する材料や施工したものが必要な品質を満たしているかを確認します。
例えばコンクリート工事で考えると、
構造物の幅・高さ・延長などを測る → 出来形管理
コンクリートの強度やスランプなどを確認する → 品質管理
という違いがあります。
どちらも施工管理では重要ですが、出来形管理では特に「設計したものが、現場でどのような形に出来上がったのか」を確認することが基本になります。
なぜ出来形管理を行うのか
施工した構造物などが、設計図書に示された位置や寸法、高さ、形状などを満たしているかを確認するために出来形管理を行います。
工事では、ただ構造物を完成させればよいわけではありません。
実際に施工したものを測定し、設計値や適用される施工管理基準と照らし合わせ、その結果を記録として残すところまでが出来形管理です。
また、施工が進むと埋戻しやコンクリートなどによって見えなくなる部分もあります。
そのため、完成後だけでなく、施工途中から必要な出来形を確認していくことも重要です。
出来形管理では何を確認するのか
位置
構造物などが、設計図に示された位置に施工されているかを確認します。
位置出しや位置の確認には、トータルステーションなどの測量機器を使用します。
トータルステーションを使った位置出しや測量の基本については、**「トータルステーションとは?施工管理で行う位置出し・測量の基本を新人向けに解説」**で詳しく解説しています。
→トータルステーションとは?位置出し・測量の基本を施工管理向けに解説 | 現場監督の土木ラボ
高さ
構造物や道路、盛土などが計画された高さで施工されているかを確認します。
高さの測定には、レベルやスタッフなどを使用します。
レベルの見方や高さの求め方など、レベル測量の基本については、**「レベル測量とは?新人向けに見方・読み方・計算の基本を解説」**で詳しく解説しています。
→レベル測量とは?見方・読み方・計算方法を新人向けに分かりやすく解説 | 現場監督の土木ラボ
幅・厚さ・延長
構造物の幅や厚さ、施工した延長なども出来形管理の代表的な測定項目です。
例えばコンクリート構造物であれば、設計図に示された幅や厚さなどを実際に測定し、設計値と比較します。
勾配
切土や盛土、法面などでは、設計された勾配で施工されているかを確認する場合もあります。
勾配の確認には、スラントなどの道具を使用することもあります。
切土・盛土の高さや勾配を現場で示す丁張については、**「丁張とは?切土・盛土の設置方法と考え方を図解で分かりやすく解説」**で詳しく解説しています。
→丁張とは?切土・盛土の設置方法と考え方を図解で分かりやすく解説 | 現場監督の土木ラボ
出来形管理の基本的な流れ
出来形管理では、いきなり現場へ行って測定するのではなく、事前に設計図書や施工管理基準を確認しておくことが重要です。
基本的には、次のような流れで進めていきます。

1. 設計図書・出来形管理基準を確認する
まずは、その工事に適用される設計図書や施工管理基準を確認します。
出来形管理では、施工した構造物の寸法や高さなどを設計値と比較し、規格値の範囲内に収まっているかを確認します。
測定項目や規格値、測定方法・頻度などは、「土木工事施工管理基準」などに定められています。
出来形管理の基準は発注者によって異なる
こうした基準は、国土交通省や農林水産省、都道府県、市町村など、発注者によって異なる場合があります。
また、林野庁や水資源機構、高速道路会社など、それぞれの機関が定める基準や仕様書が適用される工事もあります。
さらに、同じ都道府県の工事でも、発注を担当する部局によって使用する基準書が異なる場合があります。例えば山形県では、県土整備部と農林水産部でそれぞれ施工管理に関する基準が公開されています。
ただし、基準書が異なるからといって、すべての規格値が異なるわけではありません。国の基準に準拠していたり、他機関の基準を準用していたりする場合もあります。
そのため、「この発注者だからこの基準だろう」と自己判断しないことが重要です。
施工前には、特記仕様書などの設計図書を確認し、その工事に適用される基準書と適用年度を確認します。
そのうえで、対象工種の測定項目・規格値・測定方法・測定頻度を確認しましょう。
以前の現場と同じだと思い込まず、不明な点があれば監督員に確認してから管理を進めることが大切です。
2. 測定する位置を確認する
出来形測定を行う際は、どこを測定するのかを事前に確認します。
基本的には、平面図や縦断図、横断図などの設計図を確認し、測点や折点、構造が変化する位置などを基準として測定します。
ただし、測定する位置や頻度は自分の判断だけで決めるのではなく、その工事に適用される施工管理基準を確認することが重要です。
施工管理基準には、工種ごとに測定する項目や測定箇所、測定頻度などが定められており、測定位置が豆図(模式図)で示されているものもあります。
例えば水路工では、基準高、幅や高さなどの寸法、中心線のずれ、施工延長など、構造物のどの部分を測定するのかが示されています。
盛土についても同様に、天端の基準高や幅、法長、施工延長など、確認する項目と測定箇所が施工管理基準に示されています。
そのため私は、出来形測定を行う前に図面だけを見るのではなく、施工管理基準の測定項目・測定箇所・測定頻度まで確認してから測量することが大切だと考えています。
ポイント
「測りやすい場所を測る」のではなく、「どこを、何箇所、何のために測るのか」を確認してから出来形測定を行いましょう。
3. 出来形を測定する
測定する位置や項目を確認したら、実際に出来形を測定します。
測定する内容に応じて、レベルやトータルステーション、スタッフ、スケール、コンベックス、スラントなどを使用します。
重要なのは、ただ数値を測るのではなく、「何を確認するための測定なのか」を理解して測定することです。
高さの測定については「レベル測量とは?」、位置出しや座標による測量については「トータルステーションとは?」で詳しく解説しています。
4. 設計値と実測値を比較する
出来形を測定したら、設計値と実測値を比較し、どの程度の差があるのかを確認します。
図解④を例に、設計幅1,000mmの均しコンクリートを施工した場合で考えてみます。
設計値:1,000mm
実測値:1,012mm
差:+12mm
この場合、設計値より実測値の方が12mm大きいため、測定結果は「+12mm」となります。
ただし、ここで重要なのは、+12mmという差だけを見て合否を判断しないことです。
出来形の規格値は工種や測定項目、適用する施工管理基準によって異なるため、その工事に適用される規格値と照らし合わせて確認します。
規格値については、後ほど詳しく解説します。
5. 測定結果を記録する
出来形測定が終わったら、測定した結果を出来形管理図や出来形管理表などに整理して記録します。
施工管理基準に定められた測定項目に沿って、設計値と実測値、その差を整理し、適用される規格値を満たしているか確認します。
例えば先ほどの測定結果であれば、
設計値:1,000mm
実測値:1,012mm
差:+12mm
として記録します。
このように各測点の測定結果を整理することで、設計値に対して実際の出来形がどの程度の差で施工されているのかを確認できます。

出来形管理図の一例
※様式や記載項目は、発注者や工事によって異なります。本図は出来形管理の考え方を説明するために作成したサンプルです。実際の工事では、適用される施工管理基準や発注者の様式を確認してください。
6. 出来形写真を撮影する
出来形管理では、実際に寸法や高さなどを測定するだけでなく、測定状況や出来形を写真として記録に残すことも重要です。
出来形写真を撮影することで、「どの場所で、どのように測定し、どのような出来形だったのか」を記録として残すことができます。
特に注意したいのが、施工が進むと見えなくなってしまう部分です。
例えば、コンクリートを打設すると隠れてしまう箇所や、盛土・埋戻しによって確認できなくなる箇所などは、施工後にもう一度確認しようと思っても簡単にはできません。
そのため、こうした工種を施工する前には、
「どこを測るのか」
「何を撮影するのか」
「どのタイミングで記録するのか」
を事前に確認しておくことが大切です。
施工が完了してから測定や写真の撮り忘れに気付き、確認のために掘り起こすような手戻りは、できる限り避けなければなりません。
手戻りが発生すれば工程や費用に影響するだけでなく、実際に施工してくれている施工班との信頼関係にも関わります。
だからといって、施工管理基準のすべてを暗記しておく必要はありません。
大切なのは、今施工している工種について、必要な測定項目や撮影内容を事前に確認しておくことです。
私は、必要な測定項目や撮影内容を野帳などに書き出しておくことで、測り忘れや撮影忘れを防ぐようにしています。
工事写真で「何を撮るのか」「なぜ写真管理が必要なのか」については、**「施工管理の写真管理とは?何を撮るのか・なぜ大変なのかを解説」**で詳しく解説しています。
→ 施工管理の写真管理とは?何を撮るのか・なぜ大変なのかを解説 | 現場監督の土木ラボ
また、撮り忘れや見切れ、黒板の記載ミスなど、工事写真で起こりやすい失敗については、**「工事写真でよくある失敗とは?撮り忘れ・見切れ・黒板ミスを防ぐコツ」**も参考にしてください。
→工事写真でよくある失敗とは?撮り忘れ・見切れ・黒板ミスを防ぐコツ | 現場監督の土木ラボ
出来形管理で重要な「規格値」とは
ここまで何度か「規格値」という言葉が出てきました。
出来形管理を理解するうえで重要なので、設計値との違いを整理しておきましょう。
設計値と規格値は同じではない
設計値とは、設計図書に示された構造物の寸法や高さ、延長など、施工するうえで目標となる数値です。
例えば、均しコンクリートの設計幅が1,000mmであれば、施工ではこの1,000mmを目標として仕上げていきます。
一方、規格値とは、施工した出来形が基準を満たしているかを判断するために定められた許容範囲です。
実際の施工では、設計値に対してまったく誤差なく仕上げることが難しい場合もあります。
そのため出来形管理では、実測値と設計値との差を求め、その差が適用される施工管理基準の規格値を満たしているか確認します。
整理すると、
設計値=施工で目標とする値
実測値=実際に施工したものを測った値
規格値=出来形が基準を満たしているか判断するための許容範囲
と考えると分かりやすいでしょう。
規格値に入っていれば何でもいいわけではない
出来形管理では規格値を満たしていることが重要ですが、「規格値に入っていれば、どのように施工してもよい」というわけではありません。
例えば、私が担当している工事では、均しコンクリートの幅に「-100mm」という規格値が設定されています。
設計幅が1,000mmの場合、
「-100mmまで規格値内だから、901mmで施工しても問題ない」
と考えて施工するわけではありません。
施工で目標とするのは、あくまで設計値です。
そのため私は、完成後に出来形を測定するだけでなく、型枠の位置出しなど施工途中から寸法を確認し、できるだけ設計値に近い状態で完成できるよう管理しています。
また、私の会社では発注者が定める規格値とは別に、規格値の50%を目安とした社内規格値を設定しています。
社内規格値を設け、発注者の規格値よりも厳しい範囲で施工途中から管理することで、規格値を外れるリスクを減らすようにしています。
※社内規格値の考え方や設定方法は、会社や現場によって異なります。
大切なのは、「規格値に入っているからOK」で終わるのではなく、設計値を目標として施工途中から出来形を管理することです。
施工中から出来形管理を意識する
出来形管理というと、施工が完了してから寸法や高さを測定する仕事というイメージを持つかもしれません。
しかし、完成後に測定した結果が規格値を外れていれば、手直しや再施工が必要になる場合があります。
また、コンクリートや埋戻しなど、次の工程へ進むことで確認できなくなる部分もあります。
そのため、出来形管理では完成してから測るのではなく、施工前・施工途中から出来形を意識することが重要です。
私は施工前に図面や施工管理基準を確認し、
「この工種では何を測るのか」
「いつ測らなければならないのか」
「次の工程に進むと確認できなくなる部分はないか」
を考えてから施工を進めるようにしています。
施工前に確認する → 施工途中で管理する → 完成後に測定・記録する
この流れを意識することで、測定忘れや写真の撮り忘れ、手戻りの防止にもつながります。
新人が出来形管理で意識したいこと
新人の頃から施工管理基準をすべて覚える必要はありません。
まずは、現在施工している工種について確認する習慣をつけることが大切です。
施工前に、
- 何を測るのか
- どこを測るのか
- いつ測るのか
- どの規格値で管理するのか
- どの写真を残すのか
を確認しておくだけでも、測定忘れや撮影忘れを減らすことができます。
そして、出来形測定では「言われた場所を測る」だけで終わらず、
「なぜここを測るのか?」
「この数値で何を確認しているのか?」
まで考えてみてください。
測ること自体が目的ではなく、設計したものが現場で正しく出来上がっていることを確認するために測定していると理解できるようになると、出来形管理の考え方も分かりやすくなります。
出来形管理は資格勉強にもつながる
出来形管理は、1級・2級土木施工管理技士の勉強にもつながる内容です。
私自身も資格勉強をする中で、普段現場で行っている測定や管理について、「なぜこの管理を行っているのか」を改めて整理する機会になりました。
現場で経験したことと資格勉強の知識を結びつけて考えることで、どちらの理解も深めやすくなると思います。
まとめ
出来形管理とは、施工した構造物などが設計図書に基づいて出来上がっているかを、測定・記録・写真などによって確認する施工管理の重要な仕事です。
新人のうちは、まず
「何を、どこで、いつ測り、何を確認するのか」
を意識してみてください。
また、出来形管理は完成したものを測るだけではありません。
施工前に設計図書や施工管理基準を確認し、施工途中から出来形を意識することで、測定忘れや写真の撮り忘れ、手戻りの防止にもつながります。
最初から施工管理基準をすべて覚える必要はありません。
まずは今施工している工種から、一つずつ「何を管理するのか」を確認する習慣をつけていきましょう。
次回は、出来形管理と並んで施工管理で重要となる**「品質管理」**について解説します。
それでは皆さんご安全に!👷♂️✨🫡

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