砂防事業の便益について、まとめてみました。

こんにちは!Doboku Labの浅野です。

タイトルにもありますが、「砂防」という言葉をみなさんはご存知でしょうか?

砂防とは、土砂災害の対策のことです。かなり土木の世界ではメジャーで、「砂防部」みたいな部署がある会社さんも多いですね。

砂防ダム

その砂防事業の便益について、国土交通省が『砂防事業の費用便益分析マニュアル(案)』1)という資料で計測の方法などを紹介しています。

その考え方を、国土交通省のこの資料を読みながら、まとめていきます。

参考 砂防事業の費用便益分析マニュアル(案)国土交通省

砂防事業の効果はどんなもの?

図1 砂防事業の効果の分類 1)

被害を直接減らすことによる効果と、その効果によって間接的に得られる効果がありますね。

また、災害に対する事業であるため、直接的に貨幣価値で測りやすいものが、多いものかと思っていました。

しかし、貨幣価値に換算することが簡単ではないものも非常に多くありました。

土木の波及する範囲の広さを痛感します。

注意
国土交通省1)はこんな表記をしています。

しかしながら、各々の効果を整理すると、図 1 に示した効果は、砂防事業だけで発揮さ
れるとは限らない(例えば、土地利用可能地拡大効果や産業立地進行効果などは、他の社
会資本整備が伴わないと達成が困難である)。
したがって、砂防事業の効果は、各々の特性を踏まえ、二重計上することなく各々の効
果を貨幣換算しなければならない。

波及する範囲が広いので、その便益の二重計測には気を付けましょう。

便益の二重計測
例えば、ある効果Aが波及してBやCという効果を生んだとします。便益を考えるときに、AとBとCを合計してしまうと、本質的にはAの効果が2倍3倍と過大評価されていることになってしまいます。詳しくは専門書などを参照してください。

平成17年時点では計測できていなかった効果も、様々な検討により評価できるようになってきたとあるので、技術の進歩も感じられました。

この資料の時点で「二重計上の可能性がある、あるいは現時点で貨幣換算の手法が確立していない項目」として扱われている項目は以下の通りです。

  • 土地利用高度化効果
  • 土地利用可能地拡大効果
  • 産業立地進行効果
  • 定住人口維持効果
  • 地価に及ぼす影響効果

これらの効果は他の事業による効果もあるので、省くという訳です。しかしそうなると、これらの便益はずっと計測されないことになってしまうので、どうにか計測手法を検討したいですね。

調査の基本方針や流れ

『砂防事業の費用便益分析マニュアル(案)』1)には、調査の基本方針として、大きく二つの項目が書かれています。

  1. 砂防設備の整備期間と砂防設備の完成から 50 年間までを評価対象期間とする。
  2. 予測技術が確立していない現象に関する便益などは、概ね100年以内に発生した現象と同程度の現象を対象にする。

土木構造物のオーダーでよく言われる50年が、ここでも基準となっています。

しかし、私が引っかかったのは後者。たった過去100年ほどのデータしかないことです。仕方のないことですが、このデータに基づく評価・予測の精度は決して高くないことを考えないといけません。

つまり、「想定外の災害」は起こりうるのだということです。

そして、全体の検討手順は以下のようになります。

図 2 砂防事業効果の検討手順 1)

どんな範囲が対象になるのか

被害をどの範囲で合計するのか、下記のように設定されていました。

まず前提として、土砂の生産及びその流出により被害が生じる範囲を考えます。砂が流されたりする範囲を考えるという訳です。

そして災害ごとに分けて考えます。

  1. 土砂・洪水による想定氾濫区域は、上流からの流出土砂等による土砂・洪水氾濫によって、被害が想定される範囲とする。
  2. 土石流による想定氾濫区域は、土石流の直撃によって、対象流域内の集落や公共施設等への被害が想定される範囲とする。

ここからも分かるように、災害などの評価・検討においてはその災害の特徴や性質を考えて、それにあった評価が求められていることが分かります。

浅野

地域ごと、地質や成分ごとなど、もっと詳しく考えられる未来が来るといいですね。

今後の課題として挙げられているものは…?

砂防関係事業に関しての評価・検討はまだまだ知見が足りないので、課題をいくつか挙げています。

  1. データの蓄積
  2. 評価手法の高度化
  3. 原単位の精査
  4. 便益計測の対象とする効果項目の見直し
  5. 新たな視点に立った評価手法の検討

「1.データの蓄積」は災害に関するデータをさらに蓄積して、可能な限り正確な実態を今後の検討に活かしたいということです。

「2.評価手法の高度化」は、流木による被害などまだまだ現時点では十分に被害規模等を想定できない現象も、評価・検討する方法を確立したいということです。

「3.原単位の精査」は、基準となる値をさらに細分化したりなど、正確性を追求できるのではないかということです。

「4.便益計測の対象とする効果項目の見直し」は、二重計測などで省いた効果項目は本当に省いていいのか、などの課題です。

「5.新たな視点に立った評価手法の検討」は、お金のことだけを考えるのではなく、他の効果なども検討すべきではないということです。専門用語でいうところの、B/C至上主義からの脱却などがあります。

浅野

ここまで、いかがだったでしょうか?砂防という特定の事業の便益の出し方の特徴が少しでも伝わればいいなと思います!

参考文献

1)国土交通省:砂防事業の費用便益分析マニュアル(案),2012.