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連載シリーズ【土木との関わり方を考える】市民活動編 〜僕らの街の交通を考える〜

Doboku Labの望月です。

連載シリーズ【土木との関わり方を考える】は、自分たちの常識を一度横に置いておいて、自分たちはどのような形で土木と関わるかを見つめ直すきっかけを目指しています。

初回は、埼玉県熊谷市で活動する「すいっとプロジェクト」の樽見さんです。
自分が主宰した小さなイベントに参加して頂き、今回のインタビューにつながりました。


 

すいっとプロジェクトという活動

──改めて、すいっとプロジェクトについて教えてください。

すいっとプロジェクトは、その地域を豊かで暮らしやすくするために必要な公共交通機関のあり方を提案するプロジェクトです。私はその発起人になります。

すいっとプロジェクト
関東地方の新しい交通・鉄道構想を提案する「すいっとプロジェクト」。”これから、徐々にクルマが減って行き、公共交通機関をみんなで便利に使う時代が到来すると信じています。そのような未来に向け、豊かで暮らしやすい地域を目指し、社会課題の解決に貢献できるような提案ができればと思っております。”(ホームページより)

 

 

──熊谷周辺にも、「東武熊谷線」や「秩父鉄道三ヶ尻線」がありますよね。

そうですね。東武熊谷線は廃線になってしまいましたが、これを復活させる動きもあったんです。これについては後ほどお伝えします。

※この映像は、すいっとプロジェクトとは関係ありません。

 

──ありがとうございます。今回の連載企画では「土木との関わり方を考える」ということで、何か興味のあることややりたいことがあった時に「職業として」でない関わり方を考えるきっかけになればと思っていて、この「すいっとプロジェクト」はその中でも「市民活動」的だと思っています。話は少しズレるのですが、樽見さんはどんな仕事をされているのですか?

今は児童養護施設に勤めています。土木関係は、大学以来離れていますね。

 


鉛筆で描いたら都市が繋がった

──ここからは「すいっとプロジェクト」の経緯について教えて頂きたいのですが、「すいっとプロジェクト」を思いついたのはどんなタイミングだったんですか?

もともと自分も土木系の学科で勉強していました。交通に興味があって、熊谷を通る秩父鉄道を東へ延ばして行ったらどうなるんだろうと考えていたことがありまして…。

「会社概要」秩父鉄道 https://www.chichibu-railway.co.jp/corporate/overview.html より引用

 

──自分も高校生の時は鉄道研究部に入っていたので、この線路を延ばしたら…みたいな気持ちはわかるかもしれないです笑

それで結果的には、色々な都市が繋がったんですね。古河やつくば、土浦、成田という感じで。

そこからよく調べてみると、国土交通省の「業務核都市」という考え方があることを知ったんですよね。それで「これはいけるかも」と思いました。武蔵野線に次ぐ環状線のような路線を作ることができるじゃないですか。

国土交通省『業務核都市』 http://www.mlit.go.jp/crd/daisei/gyoumukaku/index.html より引用

 

──こうしてみると、確かに合理的というか、いい感じに繋がりますね。笑 上の画像でも書かれているように”環状拠点都市群”というものが鉄道でつながるというのも面白いような気もします。思いついてから、何か行動されたりはあったのでしょうか?

いやそれが、当時はまだWindows95の時代でしたから笑 「情報発信をする」という発想はまだありませんでした。
またその当時、生活的に余裕がなくなってしまった時期だったので、特に何かをするということもなく、動けていなかったんですよね。

※業務核都市については首都圏白書からも確認できます。以下のリンクの第二章第6節に記述があります。

[blogcard url=”http://www.mlit.go.jp/toshi/daisei/toshi_daisei_fr_000026.html”]

 


埼群新線市民の会との出会い

──その中で市民の会さんとの出会いがあったんですね。

そうなんです。「熊谷市 埼群軌道新線を実現する市民の会(以下、埼群新線市民の会)」という市民団体がありまして、そこの会長さんを紹介していただく機会がありました。
商工会議所の副会頭の方が中心メンバーにいらしたこともあって、かなり精力的に活動されていました。熊谷駅前でチラシ配りをしたり、沿線の自治体にこの計画を提案したりして実現を求めていました。

この計画自体は、群馬県太田市から、熊谷を経由して埼玉県東松山市を通る東武東上線に乗り入れるというものでした。ただ、採算性の面などで頓挫し、今はほとんど活動されていないと思います。

 

──この「埼群新線市民の会」に参加されて、感じられたことはありましたか?

この埼群新線含め、今までの計画のほとんどが「東京に行く」という発想だったので、全て繋げて利便性を向上させようとしていたんですよね。この発想は今までは大事だったかもしれませんが、これからは少し変わってくるだろうと感じることが多くなりました。

だからこそ、自分たちの提案では、大都会へ繋げるというよりは都市と都市を繋げていくという考えにしています。

後は、この計画の中では「モノレール」を活用するという案もあったようですが、せっかく鉄起動路線が通る地域なのに「接続性」が欠けてしまうのはもったいないと思ったこともありました。そこからは、この「接続性」についても考えるようになりました。

 


すいっとプロジェクトの提案(抜粋)

──ここからは具体的な提案について聞いていきたいと思いますが、いくつかの提案があるんですね。

そうですね。今はこの5つがあります。徐々に増えてきた形ですね。

 

「交通・鉄道構想の提案」すいっとプロジェクト http://suitto.sakura.ne.jp/nc3/page_20200415090802 より

 

──今回は、成田レインボーラインと東毛多摩ラインについて伺えればと思います。まず成田レインボーラインですが、これが先ほどの秩父鉄道を東に延ばしたら…の構想ですね。

 

「成田レインボーライン」すいっとプロジェクト http://suitto.sakura.ne.jp/nc3/page_20200415090802/page_20200415090933 より

そうです。こちらは、山形新幹線や秋田新幹線のような、いわゆるミニ新幹線のような形にできたら面白いのではないかと思っています。というのも、ミニ新幹線の機能には「都市間輸送」と「沿線住民のためのローカル輸送」があると思っています。この構想では、熊谷・古河・つくば・土浦・成田を中心とする「都市間輸送」の機能と、その間の沿線住民の通勤・通学を支える、公共交通としての「ローカル輸送」の機能ができると考えています。

さらに、成田まで接続するのであれば成田国際空港にも乗り入れたいと考えました。ここで「接続性」について考える必要があると思っています。熊谷や古河には新幹線が通っているのですから、どうにか乗り入れることで、関東広域での環状鉄道としての機能だけでなく、より広い地域で成田国際空港を活用するという意味合いも重ねられると考えています。

従来より、鉄道により東北本線沿線や常磐線沿線へのアクセスの困難さを感じてきました。それらの都市にまっすぐ向かうことができず、大宮あるいは東京都心を経由し、三角形の2辺をなぞるような経路をたどらなくてはならない状況が現在でも続いています。(中略)
そのように思い描いていたルートは、東京を中心とした鉄道ネットワークに、放射路線に直交する方向の環状路線として大きな意味があるのではないかと思いました。新たに環状路線が整備されれば、関東地方の2地点間の経路が短縮され、また経路選択の自由度も高まり、鉄道がより便利な乗り物になっていくと考えました。

「成田レインボーライン」すいっとプロジェクト http://suitto.sakura.ne.jp/nc3/page_20200415090802/page_20200415090933 より

 

──「沿線地域のため」という部分と「接続性」というところを重視しているんですね。確かに今までは「東京に行くため」に首都圏では乗り入れ路線ができていた印象ですが、成田レインボーラインのような構想になると、また違った機能や役割が見出せそうですね。ちなみに、九州などで研究されている「フリーゲージトレイン」についてはどう思われますか?

フリーゲージトレイン
フリーゲージトレインとは、軌間可変電車とも呼ばれる試験電車です。国内の鉄道だけでも、いくつかの線路幅があり、乗り入れができない路線があります。電車の台車に軌間変換装置を搭載することで、複数の線路幅の路線にも対応させ、異なる軌間の路線へ乗り入れできるように開発されています。

新幹線-在来線間のフリーゲージトレインの開発は、難しいようですね。JR九州でも導入を断念していました。ただ、在来線同士であれば可能なのではないかと考えています。つまり新幹線のような高速運用ではなく、比較的低速の路線での運用ですね。この成田レインボーラインでも標準軌を用いつつ、フリーゲージトレインによって常磐線への乗り入れることも考えています。

 

──一方で、東毛多摩ラインは新規路線というイメージは少ない気がします。こちらについても教えてください。

 

「東毛多摩ライン」すいっとプロジェクト http://suitto.sakura.ne.jp/nc3/page_20200415090802/page_20200415091001 より

東毛多摩ラインは、先ほどの成田レインボーラインと合わせて関東第二の環状鉄道の役割を果たします。こちらは既存路線と新規鉄道を組み合わせて、新ルートを形成し多摩地域へつながる形になります。これは、先ほどの話で上がった「埼群新線市民の会」で頓挫したことが残念で、個人的にブラッシュアップしていたものになります。

熊谷からの最終地点についてですが、今までの「東京へ繋がるルート」ではなく、地域相互の交通を拡充するという意味でも、南下して多摩地域とつなげる方が良いのではないかと思うようになりました。

この構想で面白いところは、「廃線になってしまった路線」を有効活用し、復活させることだと思っています。熊谷市内を通る「東武妻沼線」だけでなく、太平洋セメント埼玉工場への貨物線(東武越生線 西大家駅〜JR川越線 高麗川駅の間を双方向に延びていた)も含めていて、その部分でも接続性があると思っています。

また、埼群軌道新線が最終的に目指すものが、東京へいかに到達するかでありました。しかし、時代の要請としては東京へ向かうことのみならず、地域相互間の交通を拡充していくことについても重要ではないかと感じました。そして、太田・熊谷・東松山の間に限らず、便益が広域に波及する路線である必要性も感じました。したがって、埼群軌道新線のルートは、南下するなら東京より八王子、つまり東京都多摩地方を目指すべきではないかと考えました。それにより、関東地方のなかで大きな存在価値が見込めるのではないかと思ったのです。

「東毛多摩ライン」すいっとプロジェクト http://suitto.sakura.ne.jp/nc3/page_20200415090802/page_20200415091001 より

 


すいっとプロジェクトから今できること

──すいっとプロジェクトに自分も参加させていただくこととなりましたが、これからどんなことができるのでしょうか。

鉄道は基本的に派生需要の占める割合が大きいと思います。進学先の選択肢が増えたり、生活が少し豊かになったり、沿線の地域が発展したりする将来を考えたときに、「あれ、鉄道構想の沿線のことをあまり知らないな」って思ったんです。自分たちのこの構想から各地が繋がれば、鉄道以前の話が面白くなるんじゃないかなと考えています。

極端な話ですが、鉄道は生活があってこそだと思うんです。だから、その生活が良くなるなら鉄道構想がなくなってもいいんじゃない?っていう脱力した考え方をしています。笑 いろんな人にすいっとプロジェクトを知ってもらって、触れてもらって、手を加えて欲しいです。「みんなのすいっと」にするためにどうしていくかを一緒に考えていければと思っています。

 

──確かに、生活あっての鉄道ですね。すごくこれからが楽しみになりました。今回はありがとうございました。

こちらこそありがとうございます。これから、一緒に盛り上げていきましょう。

 

※このインタビューは2020年3月15日に実施しました

 

 

-編集後記-
このインタビュー記事は、鉄道構想の賛否を問うものではないと考えています。考えたアイデアを実践することや”鉄道”というキーワードに対して仕事ではない形でも携わることはできるということを少しでも感じてもらえれば幸いです。
(インタビュアー:望月友貴)