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南海トラフ巨大地震からの都市の守り方を考える5つの方法

こんにちは。Doboku Lab1期生の西川です。

今日は、南海トラフ巨大地震による津波被害が想定される沿岸地方中小都市を念頭において、事前復興のための方法を5つ紹介します。

南海トラフ巨大地震とは?

マグニチュード9が想定される巨大地震です。地震調査委員会は、30年以内の発生確率が70~80%としています。

画像の出典はNHK(2019)。

内閣府の「南海トラフの巨大地震モデル検討会」は2013年3月末に、5連動の巨大地震の発生可能性を発表しました。

①東海地震
②東南海地震
③南海地震
④日向灘地震
⑤南海トラフ沿いを震源とする地震

これらが連動して起こることで、想定津波は20m(黒潮町に最大34m)となり、犠牲者は32万人に上るだろうということです。
これは最悪のケースを想定したのでしょうか。文部科学省の地震調査研究推進本部は、かつて東日本大震災はM7.5、死者290名と予測して、実際にはM9.0の地震が発生してしまい、多くの批判を受けたという原体験があります。そのため、多少の過大評価も過小評価よりはよいものだという意識が働くのはごく自然に感じます。

被害額の推計

出典は内閣府(2018)。

さて、ここで僕は理系であることをいったん忘れて、30年以内に南海トラフ巨大地震の発生確率は70~80%という数字をごく直感的に解釈してみたいと思います。30年以内に起こらない確率が20~30%ということは、0.20~0.30の30乗根をとって1から引けば、1年あたりの発生確率を近似的に求めることができます。もし確率が一定であれば、1年あたりの発生確率は4.0~5.2%となります。年を追うごとに確率が大きくなっていくのであれば、直近の数年に起こる確率はこれよりさらに低いということになります。ちなみにこの論法で行けば、もし「10年以内の発生確率が99%」なら1年あたり20%程度になります。直感に反しているようですが、今日明日をおびえて過ごさなければいけないわけではないということでしょう。

それでもいつかは起こる地震に備え、全国の技術者たちが検討を積み重ねてきました。
大まかな枠組みは以下のようです。まず、2 つのレベルの高さの津波を設定します。

・L1津波…百年に一度程度の頻度で発生する津波であるレベル1津波(大変)
・L2津波…数百年に一度程度の頻度で発生する津波であるレベル2津波(とても大変)

L1 津波に対しては、防潮堤をその高さで整備して防ぐ。
堤防整備時の L2 津波による浸水深が一定以上になる区域は、居住を禁止し、高台や内陸への移転を計画する。
以上を踏まえて復興計画を考えていきます。災害が起こってからまちを移転するのではなく、あらかじめ被害の少ない場所でまちを営んでいくのが事前復興の考え方です。

実際には、地域ごとの場所性や地区固有の社会的価値基準に応じた復興計画の立案が必要です。
では事前復興の計画立案にあたっては、どのような行動が必要でしょうか。東京大学都市工学科の羽藤英二教授の議論を適宜参照しながら、記述していきます。

1.みんなで目標設定・共有する

みんなで歩いて話し合って描いてみる。まちのビジョンと言ってもいいかもしれません。なかなか,今,まちのビジョンを描くということは減ってきていると思います。でも明らかに地域は変わってきている。人口が減っている。災害がいつくるかわからない。しかし,情報技術は進歩しています。自動運転も出てくるかもしれない。いろんな背景の中でまちの将来像をもう一回描きなおすということが地域の方々にとっての事前復興になるのではないかと思っています。

復興を通じた将来の目標を事前に検討し共有することで、一人一人の行動指針となります。災害に強く、そして、地域の活性化につながる都市計画やまちづくりを考えるにあたっては、その地域に住む主体としての住民が参加して、自分ごととしてまちの将来を描くことが、住民一人一人の防災意識を高め、災害時の死者を減らすことにつながるかもしれません。例えば、高台への移転、木造建造物の密集解消、道路拡幅や道路空間再配分、防災拠点の設置、避難道の整備など、一般的にやった方がよい方策は数多あります。これに加えて、地域に住む人々の生活や生業、住民同士のつながり、地域の風土や文化を考慮に入れた計画が必要となります。地域の未来を見据えた大きな目標をみんなで掲げることで、事前復興が大きく前進します。

2.官僚組織が動ける仕組みを作る

手続きをつくるということが重要だと思います。いろんな地域で復興計画は県の方であったり西予市の方であったり取り組んでおられると思いますが,手続きを作らないとうまく機能しない。役所であったり,企業,個人,地域,それぞれ別の組織体が,縦割り・縦割りというとみなさん否定的な受け取り方をすると思いますが,動き出すとものすごく強いんです。それを動くように仕組みをセットしてあげることが大事です。

自治体は、大きな組織だからこそ、意思決定のスピードや統率力などの面で大企業と同じような課題を抱えます。縦割り行政は非難されがちですが、災害にあたっては「動くべくして動く」ような手続きを取っておくことが必要です。それにあたっては、被災後の復興の手順やプロセスを明らかにしてマニュアル化して整理しておく、組織間連携にあたっての交渉をするなど、名前の残らないような地味な作業を丁寧に完遂する覚悟が必要となります。

いろんな計画,手続き,組織が機能するにはプランを作ったり,手続きのネゴシエーションをしたり地味なことですが,町場と保健所を繋ぐであったりいろんな作業が必要です。こういうことを丁寧にすることが必要です。

3.現地に赴いて全体像を把握する

現地を自分たちで歩くということ。それをやらないで計画はつくれないということです。

現地に行って、自分の体をつかってはじめて地域の魅力も課題も見えてくる。復興計画の立案にしても、高台に避難するまでの疲労度、日照、避難した後の交通手段など、現地で確かめてはじめて復興計画の妥当性を吟味することができます。

このコロナの時期は残念ながら外出しにくい雰囲気がありましたが、おでかけしたいものですね。

4.シミュレーション等で復興の解像度を上げる

避難シミュレーションを愛媛大学のみなさんが森脇先生を中心として展開されていますが,数値,事例,論文で確度を上げていくこと,要するにピン止めしていく。いろんな個体差がありますではなくて,この対策はこの確度でいく,ここの地域の人は避難しなくちゃいけない。思い込みになってはいけませんが,ある線を引いていくことが重要ではないかと思います。

復興計画の立案にあたっては、模型、シミュレーション、論文を書くなどさまざまなツールを使って、検討過程や検討結果を可視化することが重要です。一般的に「地域に合わせた対策がある」ではなく、この事例では何を根拠にどの対策を選んだのか、といった個別具体のケーススタディを踏まえて解像度を上げていくことが大事になります。

5.災害史をふまえる

あらかじめ備えるということ。いきなり災害がおこってから歴史を調べようとしても間に合わない。あらかじめ地域の強み弱み,歴史,過去にどういった災害があったのか,そういう復興計画を立てればいいのか用意をしておかなければならないし,防災無線などはインフラなのでちゃんと用意していなければならないし,避難訓練で使ってみなければならない。あらかじめ備えるということも大事です。

地元の郷土史からは、多くの示唆が得られます。いつ、どれくらいの津波があったなど、インターネットで調べても出てこないような希少な情報が多く記述されています。地域の復興計画を立案するにあたっては、郷土史を参照して起こりうる災害の可能性を知っておくことが必要です。

以上のことを踏まえると、事前復興を考えるために

・過去のケーススタディを通じて思い付きうる打ち手の種類を増やす
・現場をみんなで歩いて話し合う

といったことを日頃からトレーニングすることが有益だと思ったのですが、皆さんはどう思いますか?

タウンウォッチングという試み

Doboku Labでは、タウンウォッチングを行っています!

タウンウォッチングとは、まちを知りながら巡ることで魅力や課題を発見するまち歩きです。
地域に密着して知識を深め、知識をフル活用して議論します。
ちょうど本日、「実際にまち歩きするかのように」をコンセプトとし、オンラインでのタウンウォッチングを実施しました。
場所は、隅田川。隅田川にかかる橋梁と、災害史との関わりを学びました!

 

参考文献リスト

画像出典元や参考としたサイトをまとめておきます。

NHK(2019) https://www3.nhk.or.jp/news/special/saigai/natural-disaster/natural-disaster_03.html
JASEABlog https://jesea.co.jp/blog/earthquake-reports07
南海トラフ巨大地震対策について http://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/taisaku_wg/pdf/20130528_houkoku_s1.pdf
南海トラフの巨大地震モデル検討会 http://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/model/
羽藤英二 http://www.cee.ehime-u.ac.jp/~rd/img/file640.pdf